NanatoMutsuki
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Reスタートはカースト最上位から(仮)

第一部 幼少期編 第二話 魔法のある世界

「これらの者たちは魔法が使えるのです」

魔法、か…

前世の世界と最も違うこと、それはこの世界には魔法があるということだ。

といっても風を操って空を飛んだり、氷の剣や像を作ったり、爆炎で攻撃する、なんてことはできない。

ごく小規模な魔法のみ可能なのだ。

小さな火を魔法で出して焚き火の種火に使ったり、怪我をした部位に手をあてて魔法で痛みを緩和させたり、少しの間だけ速く走ったり。

それに魔法を使える人自体が少数だ。

騎士団は魔法の使える選ばれた人達で構成されているのであろう。

「あの者たちは魔法を使って身体を強化し、一撃で敵を倒すことに重きをおいています。長引けば長引くほど魔法の優位性はなくなりますからな」

なるほど、一撃必殺が基本戦略なのか。

「ただ、魔法など使わなくともそんじょそこらのゴロツキなんかは手も足も出ないくらいには鍛え上げられた者たちです」

まぁそうなるよね。

魔法はあくまで最終手段。

地力がなければ使いこなすこともできないだろう。

「でも魔法を使った攻撃の後は隙ができそうだね」

「ははは!痛いところをつきますな!シャルル様は。その通りでございます。魔法が使えるのは短時間のみ。そこで仕留められなければ、その後どう防ぐか、どう逃げるかを考えねばいけません」

「フェルナンドでも魔法は短時間しか使えないの?」

「時間帯にもよりますな。昼間ならまだ長めに使えますが、夜になるとごく短時間しか使用できません」

ふーむ。

魔法は光をエネルギーにしているのかな?

魔法のことを調べてみる必要があるな。

というか僕は使えるのかな?

「剣と一緒に魔法も教えてくれる?」

「そうですな。剣の基礎ができれば魔法を組み合わせることもお伝えしたいとは思いますが、魔法の基本的なことはルイーズ殿から教わることになるのではないでしょうか」

「ルイーズ?」

「シャルル様、ルイーズ様は王国の宮廷魔法師です。魔法の指導と研究をされています。ただ..少し変わっておられて部屋から出てくることは滅多にありません。魔法の指導といっても素質がなければ使うことはできませんし、使えたとしてもできることは限られております。ルイーズ殿は魔法を研究して魔法の実用性や有用性を向上させる役割を担われております」

「アンナ殿が仰るように、ルイーズ殿は魔法の研究以外に興味を持つことはありません。元々は平民街で変人狂人のような扱いをされる変わり者だったのですが、魔法においては他者の追随を許さない知識と才能をお持ちであることが分かり、宮廷魔法師として雇っているのです」

天才魔法師ルーイズか…少し変わった人みたいだけど、魔法を教わるのは楽しみだ。

それに気になっていることもあるんだよな…ルイーズさんなら分かるかな?

「フェルナンド、色々と教えてくれてありがとう。剣の稽古をしてくれるのを楽しみにしているよ」

「ははは。それは私もですとも。しかしまずはお体を大事にされてください。少し前までのシャルル様のご様態には多くの者が心配をしていました。あまり急に頑張りすぎるとお体の負担になるかもしれませんぞ」

「シャルル様、フェルナンド様の言う通りです。まずはしっかりと食事を食べ、少しずつ運動を重ね、ゆっくり休むことを繰り返して、少しずつ慣らしていきましょう」

2人とも心配症だなぁ。

もう大丈夫なんだけどなぁ。

というか本音を言うと暇なんだよなぁ。

「最近は休んでばかりいる方が逆に辛いんだよ」

「確かに通常であれば6歳ともあれば走り回ってやんちゃしている年頃ですしな」

「でもだからと言ってまだお医者様からは激しい運動の許可はおりていません。まずはもう少し様子を見てお医者様から正式に許可が出てからにしてください!」

「ちぇ、分かったよアンナ」

アンナがずっと僕の世話をしてくれていたことは知っている。本当に心配してくれているのだろう。

「じゃあさ、せめて本が読みたいな」

「本ですか?」

僕はこの世界のことをよく知らない。

本を読んで知識を得たい。

それに魔法に関することも調べられるかもしれない。

「ではまず文字の読み書きの勉強からはじめる必要がありますね。文字が読めるようになれば王宮図書館にはたくさんの本が所蔵されているので、暇を持て余すことはないと思います」

確かにこの世界の文字をまずは覚えないといけない。

元の世界で言うとルーン文字に近いような感じだな。

「うん、じゃぁ勉強よろしくね、アンナ」

「頑張ってくだされシャルル様。陰ながら応援しております」

「早速今日からビシバシいきますからね!弱音を吐いても許しませんからね!」

と気合の入るアンナだったが、読み書きはわずか1週間足らずで理解できるようになり、ついでに算術もマスターしたことから、侍女の中では1000年に1度の天才なのではないかと噂が立つことになった。

そしてアンナはあまりにもあっさりと習得されてしまったことで、驚きと同時に寂しい気持ちに苛まれるのであった。

そんな気持ちをよそに「とっしょかん♪とっしょかん〜♪」と気分を弾ませていた僕だった。