NanatoMutsuki
welcome to my room
Reスタートはカースト最上位から(仮)

第5話 刃の向こう側(レオン視点)

雪を踏み割る音が、やけに大きく聞こえた。

剣は重くない。
腕も、息も、問題ない。
――問題なのは、思い出だ。

炎。
泣き声。
崩れる屋敷。

「……くそ」

吐き捨てるように声が漏れる。
あの日、俺は選んだ。
家族ではなく、王子を。

正しかったかどうかなんて、考えない。
考えたところで、あの結果は消えない。

魔物が現れる。
牙を剥き、唸る。

「邪魔だ」

それだけだ。

踏み込み、斬る。
血が飛ぶ。
倒れる。

生きるためじゃない。
守るためでもない。

進む邪魔だから、斬る。

王子と離れた瞬間のことを思い出す。
白い吹雪の中、姿が消えた。

探した。
呼んだ。
だが、返事はなかった。

怒りが、腹の底で冷えている。
誰に向けたものかも、もう分からない。

次の魔物。
さらに次。

剣は迷わない。
角度も、距離も、完璧だ。

そのたび、何かが削れる。
痛みも、恐怖も、ためらいも。

残るのは、動きだけ。

――斬る。
――避ける。
――刺す。

巨大な影が、前に立ちはだかった。
雪山の主と呼ばれる魔物。
一撃で人を潰す腕。

「……」

言葉は要らない。

突進。
衝撃。
骨が軋む。

それでも、前に出る。
懐に入り、刃を叩き込む。

何度も。
何度も。

最後に、魔物が崩れ落ちた。

静寂。
風の音だけ。

剣を下ろす。
息は乱れていない。

「……」

勝った。
だが、何も湧かない。

誇りも、安堵も、喜びも。

ただ、空っぽだ。

雪の上に立ち尽くし、
俺は剣についた血を見下ろしていた。