NanatoMutsuki
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Reスタートはカースト最上位から(仮)

第一部 幼少期編 第二十一話 新しい家族

王妃である母親はあまり表に出てこない。

男尊女卑の思想は相手が王妃であったとしても例外ではないのだ。

王妃の仕事は健康で才能のある子供を産むこと、このことに尽きる。

というか他に仕事はない。

ないことはないのだが、せいぜい貴族の妻達の相手をするくらいのことである。

王妃はすでに3人の子供をなした。

年齢も今年で38歳。

はっきり言って王妃としての役割はもう終わったのだ。

誰しもがそう思っていた。

「今日は皆に報告がある」

月1回の家族の食事会での出来事だった。

国王(父親)から告げられたことは全く予想もしていないことだった。

「新しく家族ができる。あと三月か四月もすれば産まれるだろう」

母親ヴィーネの席の後ろに移動したエルヴェは身重であるヴィーネの肩を優しく抱きながらにこやかにそう告げた。

「え?そうなの??母上!おめでとうございます!」

‥やべー、全然気が付かなかった。

「ええ、シャルル。ありがとう」

「なによあんた、気付いてなかったの?少し前からゆったりしたドレスになっていたし、お腹を気にしていたじゃないの。そういうところがダメなのよ!」

この指摘はごもっともである。

こういう細かな変化に男は気付けないからダメなのだ。

変化に気付かない=興味がない、と受け取られてしまうのだ。

しかし実はシャルルは母親に対して興味がないわけではなかった。

ヴィーネは現在38歳。

シャルルの前世での年齢も合わせればほぼ同い年。

はっきり言うと一番好みに合う年齢なのである。

子供は最初に母親に恋をするというが、シャルルの場合精神面の発達はすでに成熟している状況なので、複雑な感情を抱いていた。

それに育ててもらったのは3歳まで。

正直、記憶や思い出もそれほど覚えていない。

前世での記憶も相まり、母親というよりは異性としての感覚が強い。

しかし母親は母親、複雑である。

「あら、エレナだって私が教えてあげるまで気が付かなかったじゃない」

「そ、そんなことないわよ!薄々気付いていたもん!」

「ケンカしないの。ソフィア、エレナもありがとうね」

「本来であればもう少し早く公表するのだが、年齢が年齢だ。無事に育ってくれるか分からなかった。ここまでくれば一安心ということでまずはこの場での発表となった。後日、公にも発表されることになるだろう」

「‥発表すれば、こんな年齢で懐妊するなんて端ないと思われるでしょう。みんなに迷惑をかけたらごめんなさいね」

日本でも昔あったことだが、30代になってからの妊娠は恥ずかしいと言われる時代もあった。

当時の高齢出産の定義も30歳以上となっていて、現在の定義とは異なる。

富国強兵を謳っていたり、その名残が残っている時代の話なのだが、その時代とこの世界の社会的通念は大体一致すると思われる。

国を強化するために若いうちから産めよ育てよということだ。

もっとも出産死亡率も高いし、寿命だって平均的に短いし、戦争に巻き込まれて命を落とすことだって普通にある世界、日本でいう昭和初期くらいの世界観なのだ。

ヴィーネの発言に場の空気が重たくなる。

が、ここは空気を読める男として一肌脱がないとな!

「母様、そんなことないですよ。母様は若々しくお綺麗です。それに父様と母様が仲良くされていてとても誇らしいです」

「まぁ!」とヴィーネは満更でもなく喜んでいる。

女性は簡単な言葉でも褒めてあげるととても喜ぶのだ。

大事なのはちゃんと言葉にすることなのだ。

そんなシャルルの発言を受けて、ソフィアは『仲良く』という言葉に頬を赤らめ、エレナは「この誑かしが」とジト目を向けていたことには気付かぬシャルルであった。

しかし温かな団欒も束の間、新しい家族が増えることをきっかけにこの国は大きな転機を迎えることとなるのだが、そのことにはまだ誰も気付いていない。