NanatoMutsuki
welcome to my room
Reスタートはカースト最上位から(仮)

第6話 空白の輪郭(フィア視点)

息は乱れない。
刃を返し、首を落とす。
魔物は倒れ、雪に沈む。

それで終わり。

血を拭い、周囲を確認する。
次の気配はない。
火を起こす場所を選ぶ。風向きだけを見る。

生きることは、難しくない。
手順を外さなければ。

肉を焼き、必要な分だけ口に入れる。
残りは凍らせる。
夜は短く、眠りは浅い。

一人でいることに、不都合はない。
私はそう作られている。

剣の重さ、距離、角度。
考える前に体が動く。
余計な動作は削った。

それでも、ときどき――

白い息の向こうに、声が浮かぶ。

「取り戻す」

そう言った彼の顔。
怒りでも、憎しみでもない。
ただ、前を見る目。

雪原で、言葉を選ばずに話した姿。
小人族の前で、退かなかった背中。

思い出しても、胸は騒がない。
ただ、空白が一つ増える。

生存は成立している。
危険も管理できる。
それなのに、何かが足りない。

火が小さくなったので、薪を足す。
炎は応える。
それだけだ。

空を見上げる。
星は、変わらない。

変わらないことは、楽だ。
選ばなくていい。
迷わなくていい。

……それでも。

もし彼がここにいたら。